サヨナラのカタチ
突然、話を振られたって焦ることなんてほとんどない私。
会話は苦手じゃないし、
人見知りなんてしないし、
むしろフレンドリーなほう…だと思う。
なのに新島先輩が相手だとそうは行かない。
無駄に緊張して、頭が真っ白になる。
私だって物を知らない幼い子供じゃない。
この気持ちが『好き』そう呼ばれるものかもしれないのは分かってた。
分かってたけど、認めたくなかった。
だってまた…傷つくかもしれないから。
高2にもなってまだ小学生の頃の傷が癒えないなんて、バカみたいな話だけど。
そうやって自分の気持ちから逃げてたある日。
弓道部の合宿の夜。
弓道部は総勢20人ほどだが、その中でも女子はたったの5人。
一部屋で収まる人数だったので1年生2人とも同室だった。
当然、女子5人も集まれば恋の話…恋バナになる。
「海(ウミ)ちゃん、好きな子いないの?」
1コ下の海ちゃんに話を振る。
「私ですか…?」
海ちゃんは少し困った顔をして、隣にいたもう1人の1年生、鈴(スズ)ちゃんと顔を見合わせる。
すでに海ちゃんの顔は少し赤くて。
聞くまでもなく、好きな人がいるんだろう。
「言っちゃえばいいじゃん」
「え…でも…」
「ほら、照れてないでさ」
鈴ちゃんに背中を叩かれ、
海ちゃんは俯き加減で言った。
「実は…新島先輩が気になってて…」
…頭の中に雷が落ちた気がした。