サヨナラのカタチ





「なあ、久美。

僕たちは出会うべきじゃなかった。

そうは思わない?」


涙を手で拭い、またイスに座った。

もうホントに僕はどこまでも久美に弱い。



「もし、出会わなければ。


久美は僕に縛られることもなく、自由にできたろ?

それに僕は…こんなにも苦しまなくても良かった」


本当はキミに出会えてよかった。

そう、言ってあげたいんだ。


だけど、ここで久美に負けたらまた、同じ過ちを繰り返すだけになってしまう。



「私は…良次に出会えてよかったよ」


不意の言葉に僕は不覚にも、ドキッとさせられしまった。



「出来心でいろんな人と遊んだ。

だけどやっぱり私には良次しかいない、っていろんな人を見て思った。


良次は僕に縛られることもなく、って言ったけど。

それは違うよ。


良次がいたから私は自由に…遊べたんだと思う」



「…勝手だな」


随分と勝手なことを言うんだから、久美は。

キミは出会ったときからそうだったんだ。


でも僕はそういうところもひっくるめて、キミが、好きだった。










< 8 / 103 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop