サヨナラのカタチ
「なあ、久美。
僕たちは出会うべきじゃなかった。
そうは思わない?」
涙を手で拭い、またイスに座った。
もうホントに僕はどこまでも久美に弱い。
「もし、出会わなければ。
久美は僕に縛られることもなく、自由にできたろ?
それに僕は…こんなにも苦しまなくても良かった」
本当はキミに出会えてよかった。
そう、言ってあげたいんだ。
だけど、ここで久美に負けたらまた、同じ過ちを繰り返すだけになってしまう。
「私は…良次に出会えてよかったよ」
不意の言葉に僕は不覚にも、ドキッとさせられしまった。
「出来心でいろんな人と遊んだ。
だけどやっぱり私には良次しかいない、っていろんな人を見て思った。
良次は僕に縛られることもなく、って言ったけど。
それは違うよ。
良次がいたから私は自由に…遊べたんだと思う」
「…勝手だな」
随分と勝手なことを言うんだから、久美は。
キミは出会ったときからそうだったんだ。
でも僕はそういうところもひっくるめて、キミが、好きだった。