サヨナラのカタチ
「久美、僕は…キミの幸せを1番に願ってるよ」
その言葉に久美の瞳からまた、大粒の涙が零れた。
「だからお願いだ。
もう、浮気なんてしないで。
たった1人。
その人のことだけ、見ててあげて。
もう2度と、僕と同じ想いをさせないであげて」
僕にできることは、
久美が誤ったことをしないように促すだけ。
僕はもうキミの隣に立って、
正しい道へと導いてあげることはできないから。
「明日から同僚として、よろしく。
それじゃあ、元気でね、久美。」
元気でね、そうは言ったものの、明日も職場で会うんだけども。
僕の『元気でね』の意味は
女としての久美への別れの言葉。
明日からは、ただの『同僚』
「…りょう、じ」
立ち上がった僕を見つめて久美は名前を呼ぶ。
だから僕はニコッと笑ってみせる。
そして、言い放った。
最高に愛おしく、最高に切ないその一言を。
「…サヨナラ、久美」