サヨナラのカタチ





トイレなんて行きたくなかった。

でも、ウソをついた。


「先に戻ってるね」


千絵の背中を見送ってから、私は走った。



「…先輩っ!」


「ん?…吉川か」


振り向いた新島先輩の顔を見て、

私は今自分が何をしようとしているのかに気がついた。



「…大学でも、頑張ってください」

そう言うと先輩はプッと吹き出し


「わざわざそれ言うために走って来たの?」

と言う。


違うよ。

違う。



「いや、言うの忘れてたな、と思って。」


でも、言えないよ。

そんなこと言うために走って来たワケじゃない、なんて。


本当は…


「お前は最後まで面白いヤツだな」


本当は、



「わざわざありがとな。

お前も、頑張れよ!」


スキです。


そう、言いたかった。








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