サヨナラのカタチ
「お世話に、なりました」
頭を下げる。
「やめろよ、そういうの。
なんかハズい。」
先輩の照れくさそうな笑顔が頭に浮かんだ。
きっと、今顔をあげれば想像通りの顔をしているだろう。
でも、顔を上げることができなかった。
「じゃ、行くわ。」
「お疲れ様です…」
「おう」
先輩の足が視界から消えた。
カラカラに乾いたアスファルトに涙が落ちる。
顔をあげると先輩は小走りで。
背中がだんだん遠くなっていく。
ねえ、伝えてもいいですか。
届かなくていいから。
誰にも聞こえなくていいから。
よく知ったその背中に向けて言う。
好きでした。
『憧れ』だと自分にウソをついてたけど。
でも、本当はそんなのじゃなかった。
大好きでした。
…サヨナラ、先輩。
―第6話 完―