サヨナラのカタチ





なあ、麻衣。

キミにはその答えを何も言わずに受け入れてほしい。

そしてこんな勝手な僕を、どうか恨んでくれ。



「もうすぐ行っちゃうんですね。

寂しいっす!俺…」


「そんな顔でよく言うよ。

帰ってきて重役になってもお前だけは引っ張りあげてやらないからな」


「ヒドイですよ!先輩…!!」


書類をまとめる僕の横でちょっかいをかけてくるのは2コ下の後輩の山下だ。


僕は来週から海外研修に3年行くことになっている。

この会社の社長である父親の命令だ。


そして、3年が経って僕が日本に帰ってきたとき、

僕の地位はかなり上のほうになる予定だ。

…それこそ、人事権があるくらい、偉く。


どう考えても僕の実力じゃそんな肩書き、ふさわしくない。

でも、長男として会社を継ぐ決心はついている。


3年という月日で僕がどれだけ成長できるのか、それがかかっている。


大事な、3年。

あまりに大事すぎて、

もう1つの大事なことを

僕は、手放してしないそうになっている。



「…先輩?昼ですけど…大丈夫ですか?」


気がつくと周りにいた人間が少なくなっていて、

キーボードの上においた手が止まっていた。


「あ、昼か。ソバでも食い行くか?」


「いいですねえ!お供させていただきます!!」







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