雪花-YUKIBANA-
実はマユミも不倫をしていた。
相手は以前つとめていた会社の上司だと、
酔った勢いで話してくれたことがある。
だからこそマユミは、
今のミドリを見ていられないんじゃないだろうか?
まるで、自分自身の愚かさを、つきつけられているようで。
僕は、ミドリの真っ赤なマニキュアを思い出して、
なぜだか哀しい気持ちになった。
閉店時間をむかえるとすぐに店を出た。
ポケットの中でしわくちゃになった紙切れには、
走り書きの文字で電話番号が書かれている。
さて、どうしようか。
今日は土曜日。
やはりというべきか、週末の街は騒がしい。
そのとき、男のがなり声がどこからか響いた。
人々の視線が向けられた方向に、興味本位で目をやる。