雪花-YUKIBANA-
「俺ですか?」
「そう。あんたは何か仕事してるわけ?
それとも学生さん?」
「いえ」
風俗店で働いてるんです、
と声をひそめて言うと、男は目を真ん丸にしてヒューッと声をあげた。
「すげえ!なんか面白そうだな!」
「そうでもないですよ」
「あんたけっこう男前だし、店の女とか手出してんだろ?」
「いえいえ、それで一度痛い目を見てるんで」
酒のせいなのか、
それとも少なからず気を許してしまったのか。
僕はなぜか最近の自分に起こった出来事を、初対面の男に話し始めた。
コンパニオンとの関係が社長にバレて、
東京に飛ばされてきたこと。
こっちでは仕事ばかりで、ろくに遊んでいないこと。
そして、兄妹としていっしょに暮らし始めた
女の子のことも。
すべての話が終わったとき、男が言った。
「なんかさあ、女遊びをやめた理由は、他のところにある気がするけどな」
「え?」
「妹さんだよ。桜子ちゃんだっけ?
俺には、その子の存在が大きいように感じられるんだけど」
どういうことだろう。
僕はきょとんと男を見つめる。