雪花-YUKIBANA-
ミドリが求めたもの
恋――
僕たち兄妹の関係を、まるで恋だと初対面の男は言った。
まさかねと思いつつ、そっと自分の心に問いかけてみる。
僕は、彼女が好きなのか?
けれど、そんな甘酸っぱい迷いを吹き飛ばしてしまうくらい、
日々は急速に過ぎていった。
桜の木が深緑の葉をたずさえ、5月を迎えた。
新大学生の女の子たちが、そろって面接に来てくれたのは、ラッキーな出来事だった。
若さが店に活気を呼び戻し、
そして客も呼んだ。
売り上げは日に日に伸びている。
僕はもう給料に頭を悩ませる必要はないし、
店がつぶれるんじゃないかなんて、心配する必要もない。
こうなると、とたんに恋でもしてみたくなるのが世の男の常だ。
けれどそれは、
あれこれ迷ったり
今さら悩んだりする恋愛じゃなくて、
もっと明確で、単純な恋のことだけど。