雪花-YUKIBANA-
バスルームへ向かおうとするミドリの体を引き寄せ、
キスをした。
崩れかかるようにして、僕の腕に身を任せてくれる彼女に、気持ちがたかぶる。
「拓人って」
行為のあとにミドリが言った。
「手っとり早い女しか愛せない人だよね」
僕は吹き出る額の汗をぬぐいながら、うつろな視線で彼女を見る。
「え?」
「人当たりはそこそこよくて、来るもの拒まずなんだけど、
本当に惚れた女に対して、自分から求めていかない人っているでしょう?」
「それ、俺のこと言ってるの?」
もちろん、とミドリは微笑みながら、僕にすり寄った。
火照った体がふたつ、触れ合った部分だけが汗でやたら冷たい。
「俺はミドリのこと好きだよ?」
「あら、ありがとう」
ミドリの部屋のベッドは、大人ふたりがちょうど納まる程度の大きさだった。
まるで、そのために用意されたような寝具。
正確には、以前付き合っていたという若社長のために。
けれど僕が代わりに使うようになって、今日で3度目だ。