雪花-YUKIBANA-
「これって――」


思わず出た声は、小刻みに震えていた。


「どういうことだよ」


出勤しているはずの女の子の姿が、ほとんど見当たらなかった。


かろうじて来ていたのは、
マユミと、古株のコンパニオンが2人だけ。


「渋谷に新しくオープンした店があるでしょ?
あそこにね、新人の子たちが面接で入っていくのを、今日のお昼にたまたま見ちゃったの」


呆然とする僕に、マユミが言った。



開店時間が迫っている。

気ばかりがあせり、どうすることもできない。


「そうだ、コバ――あいつはどこに行った?」


キョロキョロしながら言った僕の言葉が、店内の空気を凍らせた。


古株のひとりが言う。


「来て……ないです」

「……嘘だろ」


そのとき扉が開いた。


ガチャ、という音を聞いたとき、

反射的にきっと全員が望みをもっただろう。


けれど視線の先に立っていたのは、



「――社長……」


うちの店をまとめるオーナー、雪村だった。





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