雪花-YUKIBANA-
「明後日までには帰るから……ごめんな」

『ううん。……無理しないでね』

「うん、ありがとう」


僕の言葉に重なるように、
ブー、と機械音が鳴り、電話が切れた。



その日僕は、ビジネスホテルのベッドで、

すべてを忘れるように昏々と眠りを貪った。





残された期限は2日。

なりふりなんか、構っていられなかった。


「だから私のところに頼みに来たってわけ?」

「うん」

「本当になりふり構わないんだね」


蔑むように言ったのは、明菜。

数ヶ月前に僕を東京移転へと追い込んだ、元№1コンパニオンだ。


「悪いけど、私もう別の店で働いてるから」

「そこを何とか――」

「どうして?」


明菜が言った。


「もう体の関係すらないあなたのために、
どうして私が東京まで行って助けなきゃいけないの?」


「……」


「希薄な人間関係で満足してきたあなたを、助けようなんて思ってくれる人が、いるかしらね?」


明菜の言葉が

容赦なく僕を刺す。




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