雪花-YUKIBANA-
「このまま働かせていて、いいの?」
真夜中の待機室でマユミが言った。
僕はソファに寝そべったまま、小さくうなずく。
「彼女が自分で決めたことだし、それに」
「それに?」
「桜子が働いてくれたおかげで、俺はクビを免れたわけだしね」
マユミは長い息を吐いた。
僕の強がりを見逃すためのような仕草だった。
しんと静まり返ったこんな夜は、
タバコの煙よりも遥かに濃く、
ため息が部屋に充満していく気がする。