雪花-YUKIBANA-
心臓の音が外にもれそうなほど、大きく鳴り響いている。
何か大事なことを聞かされているような気がした。
とても
とても重要な――
「俺、思わず懺悔みたいな形で、桜子ちゃんに全部話しちゃったんです」
「――……」
桜子は、
全部、
知っていた?
全身にざわざわと鳥肌がたった。
さっきまであんなにうるさかった心臓の音が、ぴたりと止んだ。
鼓動を打つことすらやめてしまったんじゃないかと思うくらい、
体が動かなかった。
「俺……最低だ」
やっとのことでしぼり出した声は、たぶんそんなことを言ったと思う。
「最低だ……!桜子は俺のために働いてくれたのに」
「……店長?」
喉がふるえてうまく声にならない。
けれどいったん動きだした唇は、止まらなかった。
「なのに俺、桜子が金のために働いてるんだって、勝手に勘違いして、彼女を責めて……っ」
何て言った?
僕は彼女に、何て言った?
――『働きたいなら勝手に働けばいい。
店で顔合わすだろうけど、しばらく桜子とは話したくない』
――『もう、桜子がわからないんだよ……』