雪花-YUKIBANA-
「あっ、そうだ。君にプレゼント買ってきたんだ」


僕はとっさに思い出して、紙袋をまさぐった。


「プレゼント?」

「うん。――これ」


僕が差し出した物を見て、桜子の眉がかすかに揺れた。


布団の上から手を伸ばし、おそるおそるそれを受けとる。



「……スケッチブック?」

「うん。たまたま売ってるの見かけたからさ」


嘘だった。

夜分で文房具屋がどこも閉まっていたのを、むりやり開けてもらったのだ。


「俺、桜子の絵が大好きなんだ。これからもいっぱい描いて、俺に見せてよ」


桜子はまた泣き出しそうな顔になって、僕を見つめて

……それからスケッチブックに視線を戻した。


「ありがとう……」


桜子が言った。


そして目元をごしごしこすると、久しぶりの笑顔を僕に見せてくれた。


“しかたないな。もう許してあげる。”


たぶんそんな意味をこめた、少しだけぎこちない笑顔。


「ねえ、拓人……」

「ん?」

「ワガママ言ってもいい?」

「もちろん」

「添い寝、してほしいの」


消え入りそうな声で桜子が言った。


僕が固まっていると、彼女は布団のはしに身を動かし、掛け布団を半分めくった。


「お願い」


桜子の上目遣いに誘われて、僕は彼女の体で温められた布団にそっと入った。

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