雪花-YUKIBANA-

僕は言葉を発することができないまま、それを見つめた。


何か話さなければ、沈黙を悪い風に解釈されてしまうだろう。

そう思ったのに、声が出なかった。


桜子は悲しそうに微笑んで、僕から体を離した。


「ごめんね……。こんなこと言われても迷惑だよね」

「桜子――」

「けどね、私はもうこれ以上、兄妹を演じ続けることはできないの」

「桜子、違う……」

「やっぱりさ、一緒にいるべきじゃなかった――」

「違う!」


叫んだと同時に、桜子をきつく抱き寄せていた。


「頼むから……そんなこと言うな」

「……拓…人?」


腕の中で苦しそうに桜子が言った。


けれど僕はかまわずに、彼女を抱く腕に力をこめた。



「俺も……」


「え?」



「俺も……桜子と離れるのなんか、耐えられない」


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