雪花-YUKIBANA-
電気もつけずに立っているから、てっきり幽霊かと思ったんだ。


そう早口で話したら、桜子は苦笑した。


「泣き疲れて、少し眠ってたの。
拓人だって寝るときは電気消すでしょう?」


そうだけど……と僕はつぶやいて、

それから、肝心な疑問を口にした。


「けど、なんで桜子がここに?」

「私の方こそ聞きたいよ。
拓人が以前ここに住んでたって、どうゆうこと?」

「それは――」


桜子の言葉にかぶさるように、ガラガラと引き戸の開く音がした。


僕らは同時に玄関の方を見やった。


雨水のしたたる傘をたたみながら、叔父が僕らを見ていた。


「なんだ。二人とも、ここにいたのか」

「いえ、僕が一人で来てみたら、偶然出くわしたんです」

「そっかそっか。あ、こいつの名前は桜子といって――」

「知ってるよね」

桜子が僕を見上げて言った。


「あ、うん」

「なんだ?もう自己紹介済みか?」

「昨日、病院の駐車場で。ね?」

「あ、うん」


叔父は大げさに目を丸くして、

「そりゃ驚いた」

としみじみ言った。


いや、僕らにとっては、今ここで再会したことの方がよっぽど驚きだ。
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