雪花-YUKIBANA-
「何考えてるの?」
桜子が首をかしげてたずねた。
「んー、なんか、色々とね」
「何?」
「君が想像もつかないような、スケベなこと」
「あっそ」
帰り道、僕らは手をつないで歩いた。
最初は気恥ずかしかったこの行為も、最近ではすっかり慣れてきた気がする。
家まであと10歩というところで、僕らは足を止めた。
玄関の前にたたずむ、男の姿があった。
「……?」
その男は僕らが帰ってきたことに気づくと、ぴしっと背筋を伸ばした。
手触りのよさそうな坊主頭。
日に焼けた浅黒い顔。
あまりの変貌ぶりに、一瞬誰だか分からなかった。
「コバ?!」
「お久しぶりです」
「おいおい……えらくサッパリしたな!」
へへっと照れくさそうに笑って、コバは髪のなくなった頭をなでる。
頭皮から噴き出る汗が、彼の顔を流れていた。
「ずっとここで待ってたのか?」
「ええ、まあ……」
「とりあえず上がって」