雪花-YUKIBANA-


押入れの前に座り込んだまま、どれだけの時間をそうしていたのか。


正午を過ぎて叔父がおとずれたとき、

響いたはずのチャイムの音も、
玄関を開けて入ってきた足音すらも、

僕は気づかなかった。



「拓人」


背後に叔父の声がして、やっと我に返った。

振り向こうとした体が、固まったように動かなかった。


「叔父さん……」


僕は言った。


「僕の父と、桜子のお母さんは、いつ出会ったんですか?」


答えは返ってこなかった。

小刻みに震える叔父の息遣いだけが、わずかに聞こえた。


「ねえ、叔父さん」


僕は、何を聞きたいのだろう。


「桜子が生まれる前から、ふたりは出会っていたんですか?」


僕は、どんな答えを待っているのだろう。


「桜子の父親は……誰なんですか?!」



どんな、


恐ろしい答えを――



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