雪花-YUKIBANA-

「拓人!」


叔父が膝を折って、僕のかたわらにしゃがみこんだ。


床に落ちたままの写真を握りつぶすように掴み、叔父は言った。


「桜子を、好きか?」

「……」

「女としてあいつが好きか?」


……好きです。

か細い声で答え、僕はこうべを垂れた。


叔父の手の中にある写真が、視界に入る。


できるだけ強く、目をつむった。

いくらきつく閉じてみても、窓から差し込む明るすぎる太陽が、まぶたの裏を赤錆色に染めた。



蜩の鳴き声に混じって、叔父がつぶやいた。



「お前に、

きちんと話しておくべきことがあるんだ――」








< 203 / 348 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop