雪花-YUKIBANA-
「……なさけないな、俺」
僕はカウンターに肘をついてうなだれた。
「好きな女の悪口言われてるのに、言い返す言葉も見つからないなんて」
「悪口?違うわよ。意見よ」
「マユミの個人的意見?」
彼女は、う~ん、と首をひねって、
「コンパニオン全体の意見、かな」
「ハァー……」
女というやつは、どうしてこうも集団的な意見を持ちたがるんだろう。
うんざりだ。
知ったかぶりの悪口も、反論できない僕自身にも。
……けれど、誰が言えるだろう?
愛した彼女は実の妹かもしれない、なんて。
「距離を置こうと思った理由……」
立ち上がって伝票をつかみ、僕は言った。
「話せないんだ。まだ、誰にも」
訝しそうな様子のマユミに、僕はあやふやな微笑みを返し、店を出た。