雪花-YUKIBANA-

ひたひたと足音を忍ばせて、僕たちは桜子のもとへと向かう。


一歩一歩近づいてゆくごとに、僕の胸は、はちきれそうなほど暴れだす。



「じゃ、俺はここで帰るから」


病室の前に着いたとき、義広が言った。


「……うん。ありがとう」

「礼はいいよ。俺、あのとき言っただろ?
次に会ったら俺のおごりだって」


これでおあいこな、と義広は微笑み、僕の肩をポンと叩いて去ってゆく。


その右肩のぬくもりが消えないうちに、僕はドアを開けた。




白い部屋に、彼女が眠っていた。



真っ白な壁と、真っ白なシーツ。


電気もついていない部屋がどうしてそんなに白く見えたのか、わからないけれど。



窓際のベッドで眠る彼女の顔が、月明かりにほのかに照らされている。

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