雪花-YUKIBANA-
「……産んでもいいの?」
弱々しい声で桜子がつぶやいた。
僕はそっと体を離すと、彼女の細い肩をつかみ、視線をつないだ。
「産んでほしい」
「……」
彼女の眉が痙攣したように震える。
唇はきつく結ばれ、への字を描く。
涙がみるみるうちに頬を濡らした。
まるで子供の泣きべそみたいな表情に、僕は笑いをこぼす。
「泣くなよ」
「泣いてない」
「桜子って、嬉しいときはすぐ泣くよな」
「泣いてないってば」
かたくなに否定するけれど、“嬉しいとき”という言葉は否定しなかった。
それが嬉しくて、僕は叫びだしそうになる。
「桜子」
「……何?」
「また一緒に暮らそうよ。うちに帰ろう」