雪花-YUKIBANA-
僕たちの二人暮しが再び始まった。
彼女は久々の我が家に入ると、一息つくよりも先に、家中のいたる所をチェックして回った。
「へえ、意外とキレイに使ってたのね」
と満足げに腕組みして微笑む。
「そりゃあもう、掃除だけは欠かさなかったから。
いつ君が帰ってきてもいいようにね」
「ふぅん。誰か掃除してくれる人が、他にいたとか?」
「バカ。ありえないし」
体調がマシだったので、今日は桜子がゴハンを作ってくれた。
彼女がキッチンに立つ間、僕はそわそわと食器を並べたり、鍋の中身をつまみ食いして怒られたりした。
「久しぶりの君の手料理だ」
と僕は喜ぶ。
「私も久々に作った」
と彼女が言う。
会えなかった時間は彼女から、料理という日常的な行為まで奪っていた。
僕たちはもう、普通に暮らす事すらも、互いがいなければままならない。