雪花-YUKIBANA-
彼女のお腹に手を当てる。
ほんわりと温かい、まだ平らなお腹。
幸せを共有する形が、ここにある。
けれど僕には、きちんと話し合わなければいけない人がいた。
僕たちの運命を遠くから見守ってきた、苦悩の人。
「……妊娠?」
そう呟いたきり、受話器から叔父の声が途絶えた。
予想通りの反応に、いちいち傷つきそうになる僕がいる。
「14週目に入りました。順調だそうです」
「順調って、まさか」
「産むつもりです」
それを聞くと叔父はまた黙り込んでしまった。
電話でよかった、と思った。
緊張でこわばった表情や貧乏揺すりを、叔父に見られずにすんだから。