雪花-YUKIBANA-
桜子はすぐに亜紀さんになついてしまった。
「お姉ちゃんができたみたいで嬉しい」なんて言葉を何の臆面もなく言って、車内をなごやかなムードに変えていく。
「ねえねえ、亜紀さんの子供は?今日はお留守番?」
「先にパーティの会場に連れて行ったんだよ」
とコバが答えた。
「会場?そういえばパーティってどこでするの?」
桜子の質問に、僕たちはいっせいに口をつぐむ。
「えっ、何?なんでみんな黙るわけ?」
「コバー、ちょっと暖房きつくないか?」
「すんません。ちょっと温度下げます」
「ねえ!なんで無視すんのよー?!」
僕の服をクイクイっと引っ張って主張する桜子。
もちろん誰も相手にしない。
「何なの?もうーっ。ねえ亜季さん!亜季さんは私の味方だよね?」
助手席に後ろからしがみついて桜子が言うと、亜季さんはすっとぼけた声で答える。
「さあね~」
「……ぷっ」
思わず吹き出した僕をじろりと睨む桜子。
僕は白々しく目をそらし、口笛なんか吹いてみる。
桜子の唇がみるみる尖り、そっぽを向こうとしたそのとき、コバが言った。
「はーい、着いたよ」