雪花-YUKIBANA-
車がバックで駐車場に入り、ブレーキの振動がわずかに伝わる。
フロントガラスから見える景色は、葉が落ちて裸になったイチョウ並木。
その向こう側の大通りには、お店が連なっている。
僕は車から降りて真冬の空気を吸った。
鼻腔がつんと痺れ、すぐに治まった。
コバと亜季さんも外に出て、「んん~っ」と伸びをする。
手のひらを空に向けて、
体を伸ばして、
いっぱい背伸びして――
そして、3人そろって桜子の方を見た。
「何してんの?早く降りなよ」
桜子は車の中に座ったまま、フロントガラスの向こうを見て呆けている。
「……だって」
狐につままれたような顔で、彼女がつぶやいた。
「ここ……私がよく知ってる場所の近くだもん」