雪花-YUKIBANA-

車がバックで駐車場に入り、ブレーキの振動がわずかに伝わる。


フロントガラスから見える景色は、葉が落ちて裸になったイチョウ並木。

その向こう側の大通りには、お店が連なっている。


僕は車から降りて真冬の空気を吸った。

鼻腔がつんと痺れ、すぐに治まった。


コバと亜季さんも外に出て、「んん~っ」と伸びをする。


手のひらを空に向けて、
体を伸ばして、

いっぱい背伸びして――


そして、3人そろって桜子の方を見た。


「何してんの?早く降りなよ」


桜子は車の中に座ったまま、フロントガラスの向こうを見て呆けている。


「……だって」


狐につままれたような顔で、彼女がつぶやいた。


「ここ……私がよく知ってる場所の近くだもん」

< 260 / 348 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop