雪花-YUKIBANA-
僕が聞きたくてもなぜか聞けなかったことを、さらりと口にするコバ。
勇気があるのか何も考えていないのか、その辺りはわからないけれど、
僕は内心ガッツポーズでコバを讃える。
「旅だよ」
と桜子は答えた。
「色んなところを旅してたの」
「まじで?ひとりで?」
「うん。スケッチブックを持ってね。けっこう楽しかったんだから」
軽い口調でそう言う彼女に、僕もコバも思わず脱力してしまう。
まったく、あのとき僕たちがどんな気持ちで桜子を探していたのか、全然わかっていないのだから。
「あっ」
突然大声を出した僕に、全員の視線が向いた。
「そのスケッチブックって俺があげたやつ?」
「そうだけど」