雪花-YUKIBANA-
スタッフに何と言って店を出てきたのか、まったく覚えていない。
混乱する頭で、どうにか病院まで辿りついた。
僕の足音がけたたましく廊下に響く。
走らないでください、と看護士の険しい声がした。
けれどすぐに遠ざかった。
「――桜子っ!」
ノックもせずに、勢い任せにドアを開けた。
まず目に飛び込んだのは義広の姿。
そして次に、ベッドに横たわる桜子だった。
「……具合…は?」
肺がつぶれそうなほどに痛い。
息が切れて、うまくしゃべれなかった。
そのとき、
「大丈夫ですよ。心配ありません」
聞き覚えのない声にそう言われた。
義広の他にもうひとり、白衣の男がいたことを僕はようやく気づいた。