雪花-YUKIBANA-
僕は桜子の表情をうかがう。
目が合うと、彼女は親にすがる子供のような目で、首を振った。
僕はなるべく気持ちを落ち着かせて言った。
「あの、できれば自宅療養でいきたいんですが」
先生はメガネの奥の瞳を細めて、しばらく考える。
「……わかりました。しばらく様子を見ましょう」
「ありがとうございます」
「ただし、安静を心がけてくださいね。食事にも気をつけて。
それから桜子さんの場合は、これまでに何度か貧血を起こしていますし……」
一気に説明し終わると、先生は腕組みして、
「これじゃまるで、口うるさい教師ですね」
と苦笑した。
その人の良さそうな笑顔に、僕も桜子も、すーっと気持ちが軽くなる。
「とにかく、いっしょに頑張りましょう」
先生が頼もしい口調で言った。