雪花-YUKIBANA-

「明日の検診、俺も一緒に行ってあげたかったんだけど」

「ああ、いいよ。オーナーさんに付き合わなきゃいけないんでしょ?」

「うん。なんでこんな日に限って?って感じだよ。ほんとごめん。
代わりに叔父さんが付き添ってくれるらしいから」

「わかった。気にしないで」


彼女は物分りのいい口調でそう言って、笑ってみせた。

そしてもう一度、窓の方を向く。


「桜……見に行きたいなあ」

「うん」

「来年は行けるよね」

「行けるさ。子供も一緒に」


桜子は少女のような微笑みを浮かべた。


僕らが出会ってから二度目の春を迎え、少しは大人になったはずなのに、

彼女の笑顔だけはちっとも変わらない。



……どうして、こんなに愛しいんだろう。




「結婚しよっか」



ごく自然にそう言うと、彼女も自然にうなずいた。


< 321 / 348 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop