雪花-YUKIBANA-
「明日の検診、俺も一緒に行ってあげたかったんだけど」
「ああ、いいよ。オーナーさんに付き合わなきゃいけないんでしょ?」
「うん。なんでこんな日に限って?って感じだよ。ほんとごめん。
代わりに叔父さんが付き添ってくれるらしいから」
「わかった。気にしないで」
彼女は物分りのいい口調でそう言って、笑ってみせた。
そしてもう一度、窓の方を向く。
「桜……見に行きたいなあ」
「うん」
「来年は行けるよね」
「行けるさ。子供も一緒に」
桜子は少女のような微笑みを浮かべた。
僕らが出会ってから二度目の春を迎え、少しは大人になったはずなのに、
彼女の笑顔だけはちっとも変わらない。
……どうして、こんなに愛しいんだろう。
「結婚しよっか」
ごく自然にそう言うと、彼女も自然にうなずいた。