雪花-YUKIBANA-


最後のページに来た。


絵の上に記された日付に、息を呑む。


それは桜子が生きた、最後の日だったから。



あの時彼女は、僕の寝顔を描いたと言っていた。


だけど違う。

全然、違うじゃないか。



……舞い散る桜の下で、僕は笑っている。


となりには可愛らしい男の子が、やはり同じように笑っている。



桜子の姿は描かれていなかった。


けれど、そこには確かに桜子がいた。


僕は彼女の存在を、確かに感じることができた。



気の利いたフレーズも、

愛してるの一言もない。



それでもこの絵は、桜子が家族に宛てた、

最高のラブレターだった。






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