雪花-YUKIBANA-
そして旅は終わりを迎える。
スケッチブックの最後のページを、僕は静かに閉じる。
ねえ、覚えているかな。
僕の腕の中で、君がつぶやいた言葉。
――恋って不思議だね。
別の場所にいるときも、会えなかったときも。
私は記憶の中から拓人を見つけだして……
何度でも恋しちゃうんだ――
桜子。
僕も、同じ気持ちだからね。
何度だって、君を見つけ出すからね。
きっと僕はたった今、
恋に落ちたばかりなんだ。
「ほら……今年もきれいな花が咲いたよ」
満開の桜の木にそっと手を触れる。
薄紅色の淡雪が、
僕の肩にしんしんと降り積もった。
【END】