雪花-YUKIBANA-
驚いた。


普通、両親を亡くしてひとりになった家に、
高校生の女の子が自分だけで住み続けるだろうか?


そう言いかけて、僕は口をつぐむ。


“普通”? 


……そう、“普通”なら、すぐにでも親戚に引きとられるのだろう。


だったら、桜子は?


再婚相手の連れ子として、
大塚家にやってきた桜子は?


本当の父親は誰かも知らされていない、
頼れる人間のいない、桜子は?




「俺と住もうよ」



滑り落ちるように言葉が出た。


「……は?」


桜子は素っ頓狂な声をあげて、僕の方を向く。

もともと大きな目を、さらに大きく見開いて。


そのまんまるい瞳に映った僕は、まるでプロポーズでもしているような、
必死きわまりない表情をしていた。


いや、ある意味これは、求愛じみたことを言ってしまったんじゃないか?


僕ははたと気付いて、あわてて訂正する。


「いや、あの、変な意味じゃなくて……。
つまり、この提案はお互いにとってメリットがあると思うんだ」

「……拓人のメリットって?」


僕を見る桜子の視線は、明らかに猜疑に満ちている。
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