雪花-YUKIBANA-
「今日は土曜日だからお店忙しいんじゃない?」


焼き魚の骨を器用にとりながら、桜子が言った。


「まさか。あんなヒマな店に、曜日は関係ないよ」


僕はそう答えて、かぼちゃの煮物に箸を入れる。


生活リズムが異なる僕らにとって、
今日は週に一度の、ふたりで食卓をかこむ日だ。


“土曜日はいっしょに食事をとりましょう”。


これも僕たちが決めたルールのひとつ。

とは言っても、僕にとっては朝食で、
桜子にとっては早めの夕食なのだけれど。


「ねえ拓人、こんどお店に見学に行ってもいい?」

「はあ?!なんで」


だって興味あるんだもん、と桜子は目を輝かせた。


「どんな人が働いてるのかなぁとか、どんなお客さんがいるんだろうとか」

「別に、普通だよ。客も女の子も」

「そんなところで働いてて、拓人はムラムラしてこないの?」


僕はブッと味噌汁を吹き出した。
< 43 / 348 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop