雪花-YUKIBANA-
「……ん、いや。夜なのに騒がしいなあって思ってさ」

「そりゃあ、日本の首都だからね」

「そうだね」


僕が気のない返事をすると、ミドリは何も応えずにタバコに火をつけた。


むかいに座るマユミとコバは、すっかり酔っ払っていて、
ますます下ネタトークを加熱させている。


ぬるくなったビールを飲みながら、僕はささいな疑問を口にしてみた。


「ミドリちゃんってさあ」

「ん?」

「友達が風俗で働くこと、何とも思わないの?」

「全然」


ミドリはフーッと煙を吐き出す。


「私も、金持ちの若社長と愛人契約して生活してる身だから」

「……そうなの?」

「そ。だから相手が特定か不特定多数か、の違いだけであって、
好きでもない男のモノをしゃぶるのには変わりないわ」


決して投げやりな口調ではなく、淡々とした様子でミドリは言った。
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