雪花-YUKIBANA-
ろうそくはきっちり21本用意されていた。
「小さなケーキにぜんぶ立てるのは無理だ」
と言うと、桜子は
「歳の数でなければ意味がない」
と言って譲らなかった。
しかたがないので僕たちは協力して、スポンジを崩さないよう慎重にろうそくを挿していった。
「じゃあ、電気消すね」
電球のひもに手を伸ばし、桜子が言う。
パチンという音と共に暗闇がおとずれ、
バースデイケーキのまわりにだけ、ほのかな光が残された。
「すごい……きれいだ」
「きれいね」
オレンジ色のキャンドルの炎を見ながら、うっとりした口調で桜子が言った。
「さあ、拓人。ろうそくを消してね」
「その前に肝心なこと忘れてない?」
「え?」
桜子が首をかしげる。
僕はクスッと小さく笑った。
「誕生日といえば、バースデーソングだろ?」