雪花-YUKIBANA-
Happy birthday to you……
Happy birthday to you……
しゃべっている時よりも1オクターブ高い、鈴の鳴るような声。
彼女が吸い込む息の音や、
時々ほんのわずかに外れる音程。
そのすべてが、僕の耳にやさしく運ばれてきた。
彼女が音を発するたび、ろうそくの火が小さく揺れている。
そして
「ハッピーバースデイ ディア」
のあとで彼女は一瞬言いよどみ、
迷うように視線を泳がせたあと、僕の目を見て
「お兄ちゃん」
と歌った。
「――…Happy birthday to you……」
「……っ」
僕は肺が3倍にふくれそうなくらい、大きく息を吸い込むと、
いっきにろうそくに吹きかけた。
ぐらりと炎が揺らぎ、一定方向に長く伸びて、煙に変わる。
最後の一本が消える間際、
暗闇との境界で、桜子と目が合った。
彼女の唇が小さく動く。
ささやくような
「おめでとう」
の言葉だけが、暗闇に残った。
.
Happy birthday to you……
しゃべっている時よりも1オクターブ高い、鈴の鳴るような声。
彼女が吸い込む息の音や、
時々ほんのわずかに外れる音程。
そのすべてが、僕の耳にやさしく運ばれてきた。
彼女が音を発するたび、ろうそくの火が小さく揺れている。
そして
「ハッピーバースデイ ディア」
のあとで彼女は一瞬言いよどみ、
迷うように視線を泳がせたあと、僕の目を見て
「お兄ちゃん」
と歌った。
「――…Happy birthday to you……」
「……っ」
僕は肺が3倍にふくれそうなくらい、大きく息を吸い込むと、
いっきにろうそくに吹きかけた。
ぐらりと炎が揺らぎ、一定方向に長く伸びて、煙に変わる。
最後の一本が消える間際、
暗闇との境界で、桜子と目が合った。
彼女の唇が小さく動く。
ささやくような
「おめでとう」
の言葉だけが、暗闇に残った。
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