雪花-YUKIBANA-
僕の部屋は居間のすぐとなりだ。


四畳半の和室にカーペットを敷いて、むりやり洋室のように使っている。


ベッドに横になると、すぐに睡魔に襲われた。


まるで僕が来るのを、布団の中でじっと待ちかまえていたような、

体ごといっきに飲み込んでいく眠りだった。




――どのくらい経ったのか。



幼い泣き声を聞いた。


そしてガラスの砕け散る音も。



ベッドで寝ていたはずの僕は、いつの間にか起きあがり、

ぽつんと立ち尽くしていた。


視界にセピアの膜がはっている。

四畳半のせまい和室。


そのとき、何かを床にたたきつけたような振動が、となりの居間から伝わってきた。


空気を引き裂く、罵り合いの言葉。


僕はうずくまり、きつく耳をふさぐ。


やめて。

争わないで。

やめて。



そして幼い泣き声は、


どんどん大きくなってゆく。






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