deepdeepdeep 夜の帝王との秘密な関係 ~わたしは生徒で、彼は先生で~
「急げよ!!」
先生の言葉に我に戻る。
久々にホッと出来た時間。
目の前の先生が、オーナーの顔だったらもっと違っていたのかも。
同じ先生なのに、夜の顔と昼の顔では全然ちがって。
目の前にあるコーヒーをいっきに飲み干すと、急げとせがむ先生の元へ駆けつけた。
片手に車のキーを握りしめ、先生が玄関を出る。
今日は、平日。
早朝、静まり返った空気の中わたしと先生の吐息が白くなって消える。
車のエンジン音が、静粛な時間をいっきに崩していく。
窓を開けると、どこからか犬の遠吠えが聞こえてきて、同時に冷たい風が車内を突き抜ける。
「窓しめろよ。俺寒いの苦手なんだ。」
わたしだって寒いのは苦手だけど、それでも締め切った車内が、
先生とふたりっきりの車内が息苦しいの。
外を見ながら、窓を閉める。
ずっと外を見ていた。
車内に流れる音楽は、夜の先生を思わせるクラシック。
昼の先生には似合わない気がした。