アースルーリンドの騎士 番外編ファントレイユとの出会い
「・・・決闘を・・・

なさるのですか?」

ファントレイユはいかにも、

不本意のようにつぶやいた。

「勿論、好きで

している訳では、

ありませんよ。

大抵の男達は自分の惚れた

ご婦人が、私の気を引こうと

色目を使うのが気に入らず、

好んで私に

突っかかって来るんです」

ソルジェニーはこれまで

城の中で彼に見惚れる女性の、

その数の多さを考えてつぶやいた。

「・・・じゃあ、ひっきりなしに

決闘していなくては成りませんか?」

「・・・近衛の隊長に、

決闘を申し出る相手は限られます」

「・・・それで・・・あの・・・。

やっぱりお怪我を、

なさったりしますか?」

ソルジェニーが、

それは心配そうな表情を見せたので、

出会って間もない幼い王子に

心配された事が彼は、

それは嬉しい様子で軽やかに

微笑むと、返答した。

「近衛の隊長が

色恋沙汰の決闘で

怪我なんかしたら、

首が飛びますよ!

・・・幸い私は、今だに隊長で、

いられます」

ソルジェニーは、少し呆れた。

彼はそれは遠回しに、

“自分は決闘で、怪我なんかする程

剣の腕は劣っていない"と、告げたのだ。

その言い回しも、

あんまり控えめで、

ソルジェニーは彼がなぜ自分の

護衛に選ばれたのか、

理解出来たような気が、した。

彼は確かに、人目を

・・・特にご婦人の・・・

引きまくったが、

ソルジェニーに対する

その態度も、言葉遣いも、

とても控え目で気遣いに

溢れていたし、

これ程浮ついた視線を

送られ続けても職務を

きちんと理解して遂行している所も

・・・申し分無かったからだった。
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