アースルーリンドの騎士 番外編ファントレイユとの出会い
「・・・これでも近衛で、

隊長を努めておりますので、

お召しが無い場合は

部下の世話や軍務が、ございます」

婦人の頬が、彼に見つめられて

染まる様子に、つい

ソルジェニーは目を、まん丸にした。

それ程年輩では無いにしろ、

充分熟年で、身分を武器のように

纏った威厳の塊のような

ご婦人のそんな様子は、

初めて見たからだった。

彼女は少し、感動で震えるように

掠れて狼狽えたような声音で、

つぶやいた。

「・・・まあ・・・。

そんな危険なお仕事で

無ければならないの?

ご身分は?」

この明け透けな言葉にしかし、

ファントレイユは眉を

しかめる様子も無く、淡々と返した。

「・・・候爵でございます」

この時アースルーリンドの

宮廷では、公爵以外の身分は

皆下等で、虫けらのように

思われていたから、

ファントレイユはこの

大公爵夫人の同情を、

いたく買った。

「・・・ああ、それで・・・。

危険なお仕事に、

付かなければならなかったのね?

でもご努力が報いられて、

王子の護衛に付かれた事、

本当にようございましたわ。

そうね。お望みなら、

もっと危険も少なくて

それは貴方にふさわしい

役職を、私なら

ご紹介出来るのだけれど・・・」
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