ラスト・ゲーム
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もう薄暗く、家のあちこちに黄色い灯りがポゥと浮かび上がる頃。俺と親父は例のバスケットゴールの下にいた。
靴ヒモを結ぶ手に、否応なしに力がこもる。
結び終えたソレは、無骨にも少し右にズレていた。
俺の準備が終わるまで、もて余す暇を潰すように手から次々とボールを繰り出す親父。
それが音もたてずにゴールの網をくぐりぬける光景に、全身が泡立つ感覚を覚えた。
見開いた俺の視線の先…それが親父の瞳と交わる。
─息を飲むって、きっとこういうことなんだろう。
「お前からだ」
親父はニヤリと笑って、俺にボールを投げて寄越した。