ラスト・ゲーム
あっという間に時は過ぎた。
体育館は、もう早々と夕日に照らされて赤く染まる。
翔太と俺は、試合の話をしながら、冷め遣らぬ熱を互いに抑えられずにいた。
「最近、俺らけっこう調子良くね?一年もだいぶ動けるようになってきたしさぁ!」
頬を軽く蒸気させたまま、翔太はニコちゃんマークのような笑顔を見せる。
「ああ、もう最後の試合だしな」
「最後かぁ…絶対記録残そうな!元!」
変わらぬニコニコ顔に、俺もつられて笑顔になる。
その時ふと、翔太が思い出したように俺に尋ねた。
「…あ!てゆーかお前、今日朝練は良かったの?」
途端、冷たいものが体内に流れ込む。
顔がこわばるのが自分でもわかった。
「………ああ」
不自然に下に反らした目線。
それは行き場を無くして、ユラユラ揺れる。
「……何かあった?麻子ちゃんと」
少しずつ逃げていく、身体の熱。
指先から、冷たい床の温度へと馴染んでいった。