ラスト・ゲーム
「……あ…」
翔太も俺の動揺の原因にすぐに気付いたようだった。
思わず麻子から目線を剥がす。
…直視していられなかった。
「……あ…そ!あ…あたしだって元のことなんか…全っ然好きじゃないですよーだっっ!」
麻子はこわばった作り笑顔を、妙に明るい声で繋ぐ。
俺はもうただ頭が真っ白で、何もない床を見つめるしかなかった。
「…え…と、今日なんで…朝練……こなかった…の?」
語尾が震えた、彼女の声。
「…別に理由ないけど」
気付いていて、俺は感情のない声で、そう言い放つ。
「おい、元……」
翔太はそんな俺と麻子の間に挟まれて、ただただうろたえているようだった。
「…帰れば?」
抑揚のない響き。
…もう、後にはひけなかった。