ラスト・ゲーム


自分の気持ちを、溢れてくる気持ちを、必死で黒く塗り潰した。


─誰か、塞いでくれ。




「…田原と帰ればいいだろ!!」


睨み付けるような俺の目に、麻子は一瞬、ビクリとひるむ。


「……見て…た…の?」


彼女の声は、途切れ途切れに宙に舞った。


「……あ、あ~!元、妬いてるんだ!?」


冗談ぽく無理やり作った麻子の明るい声を引き金に、自分の中で…何かが千切れた。




『妬いてるんだ!?』




「…っ…好きじゃねえっていってんだろ!!」


目の前が、滲む。


……限界だった。


″泣くな!″

必死に自分に呼び掛け、強く手を握り締める。
爪が手のひらに、食い込んだ。


カッコ悪い俺だけは、麻子に見せたくない。


「…元、あた」

「いい加減黙れねぇのかよ!」





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