ラスト・ゲーム



□□



気が付くと、身体はベッドの上にあった。

いつの間にか眠っていたんだろう。

のみ終えたコップが僅かな雫を湛えて、足元に転がっていた。


意識がまだおぼろ気なボサボサ頭を撫でつけながら、空のコップ片手に一階へと向かう。





「元也」


ドアを開くとすぐに現れたのは…優しい笑顔の親父の姿。

親父が帰る時間はまだ随分先のはずで。いつもはあるはずのない彼の姿に驚いて、コップを落としそうになった。


「今日は仕事が早く終わってなぁ。家族で晩御飯食べれるの、久しぶりだ」


そう言って、本当に嬉しそうに笑う親父。



…この人は、本当に太陽みたいだ。



─眩しい。


眩しくて、羨望すら抱く。


親父にすらそんな汚れた思いを抱える自分に、心底嫌気がさした。



いつもなら親父の顔を見ると気分が晴れるはずの俺の単純な心も、今日は例外で。

なにも答えない代わりに、ダイニングのテーブル椅子に腰をおとした。




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