ラスト・ゲーム
─太陽がジリジリと俺に絡み付く。
まだ何もしていない俺はすでに汗びっしょりだった。
バスケットゴールにも反射した太陽の光は、まるで俺を焼き付くそうとしているかのよう。
そんな中で、俺はただ俺の気をそらすために、びしょびしょになりながらもひたすらシュートをうった。
─静かだ。
まるでこの世界に、俺しかいないみたいに。
…こんなに暑いのに、セミの鳴き声がないのがかえって気味が悪い。
暑さに、思考が遮断される。
でも5月の初めの『夏』は、俺に何も考えさせないようにする点では都合が良かった。
俺の手から繰り出された何百本というシュートは、少しだけ気持ちを軽くしてくれたような気がした。