ラスト・ゲーム
根負けして、ボサボサの髪の毛を掻き分けながら一階へと降りていく。
プルルルル…プルルルル…
プルルルル…プルルルル…
「あ~もううっさいなぁ…」
やっと受話器にたどり着き、乱暴にそれを手にとった。
「~はい!?」
「─元也……っ!」
耳に直に流れ込む、思い詰めた母の声。
背中に伝う冷たい汗。
…一瞬にして、血の気が引くのがわかった。
「お父さんが─…っ!」
真っ赤な血が、
俺の中で凍りつく。
──逆流する。
ズルリと。
手から滑り落ちた受話器。
螺旋状に繋がれたソレは、床スレスレの所で静止して、かすかに左右に揺れた。
セミがやっと、けたたましく鳴き始める。
真夏の喧騒の中。
俺はただ、その場に立ち尽くしていた。