ラスト・ゲーム



そう、親父は帰ってくる。


いつものようにドアを開けて…


いつものようにくったくのない笑顔を見せるんだ。









─…ガチャっ、




…微かに聞こえた、ドアの音。








時計は9時。



…俺は、夢中で階段をかけ降りた。




″親父…っ!″







″ただいま、元也″





……




眩しさに、目を細める。



だだっ広い玄関には、ただ明るい光が…差し込んでいるだけだった。



(午前、9時…か。)



…心のどこかでは、冷静な自分がいて。
親父が帰ってこないということを、俺に認識させようとしていた。



─わかっていたんだ。



…ただ、認めたくなかった。






白い光の中。

俺はそこに立ち尽くしたまま、目を細めてぼうっ…と立ち尽くしていた。







台所からは、まだ食器がすれあい、カチャカチャと音をたてている。






…しばらくして俺は、やっと居間へと入っていった。


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